カブトムシを採りに行く
現在、夜の10時すぎ。真っ暗な公園の中に懐中電灯を照らして立っている。周りはカップルとおぼしきクルマばかり。あらぬ誤解を招くといけないので、『カブトムシいるかなあ。』とわざと大きな声で独り言を言う。
先日、アピタの店頭でカブトムシがほしいと言ったK悟に対し、『カブトムシは買うもんじゃない。採りに行くものだ。』と啖呵をきった手前、今更後には引けない。かなり不気味な公園内を小走りに移動し、昼間のうちに目をつけておいた木に急ぐ。斜面(というか崖)に生えている古い木で、樹液が出ている部分が公園の通路からは死角になっていて、回り込まないとわからないようになっている。
それにしても、真っ暗闇の中、懐中電灯をくわえて崖を下りていくのは勇気がいる。もし万が一のことがあったりなんかしたら、
『カブトムシを採りに行って、自分が逝ってしまった男』
として、長野県内のニュースのネタになってしまう。そんなことになってはシャレにならないので、懸命に木の幹にしがみついき、根元をライトで照らす。
『あ、いた。』
オスのカブトムシ。それもけっこうな大物が4匹。さっそく捕まえ、持ってきた紙袋に放り込む。うーん、大漁大漁。暗闇でひとり悦に入る。
続いてもう1本の木に移動。こっちにもいる。えーと、メスのカブトムシに、あっ、ミヤマクワガタじゃん。野生のヤツは小学生以来じゃないか。いいおっさんがもう大興奮である。
こちらも捕獲して、そそくさと家に帰る。
K悟はまだ起きていた。採ってきたカブトムシ、クワガタを見せてやると大喜びである。ふう、父親の威厳を保てたようだ。